我々の研究室では,天然ゴムの生合成に関与する酵素群の機能構造解析と試験管内での自在な天然ゴム合成技術の確立を目指している。天然ゴムの基本骨格はcis-1,4-ポリイソプレンであり,分子量は100万に達する。様々な合成ゴムが開発されている現在においても,天然ゴムは工業的に需要が高く,タイヤなどの製造には不可欠である。また,工業的な天然ゴム生産は,パラゴムノキと呼ばれる熱帯地域で栽培される植物のみにほぼ完全に依存している。これまでに,ゴム生産植物のポリイソプレン合成酵素のファミリーからは,天然ゴムを合成するものは単離されておらず,その酵素的実体は謎のままであった。
我々は,パラゴムノキのラテックスに由来するゴム粒子上のタンパク質のプロテオーム解析と,タンパク質間相互作用に基づくスクリーニングから,新規なタンパク質を含む3つのタンパク質を見出した。これまでに天然ゴム合成に関与するタンパク質はいくつか報告されていたものの,それらの機能を直接確認できたものはなく,機能評価のための技術開発が必要であった。我々は,ゴム粒子へタンパク質を無細胞的に導入する手法の開発に成功し,単離したタンパク質がゴム合成酵素複合体として機能していることを明らかにした。今後の研究は,以下を目標として行う予定である。