近年の観光においては,地域理解を深め内的発展に資する地域固有の文化として,伝統工芸の重要性が認識されている。各自治体では観光の資源開発やそのPRに取り組んでいる。しかし,観光による地域文化の変容や職人への負担増加が問われており,観光による持続的な経済発展と文化の保全の両立を図る必要もある。
これまでの研究で,産地における伝統的な原材料や技法の維持/変容に着目し,自然や文化との連関から工芸の歴史を理解することで,工芸が文化的景観として地域の歴史や現状を表象する可能性や妥当性について検討してきた。
本研究ではこの研究を進展させ,現在の工芸を活用した観光から多種多様な工芸産業を連関したものへと拡大し,自然や文化のネットワークを捉えることで広域観光へと発展することを目指す。具体的には,伝統工芸の保全や変容と自然環境を含む景観との関係の実態・実体を把握し,地域の持続的な発展と観光の在り方を追求することを目的とする。また,観光と文化保全を両立させた地域デザインの提案を行う。具体的には,以下の3点に取り組む。