動物の発生・成長は後天的要因の悪化(栄養や酸素の不足など)により遅滞するが,遅滞要因の除去で成長度の急速な回復(追いつき成長)が見られる。また,胎児期の著しい成長遅滞やその後の追いつき成長は将来の体質の変化(肥満,二型糖尿病,高血圧等の疾病率の増加など)を引き起こすことも知られている。これらのことはヒトを含めた動物の形質制御や健康維持において重要な問題であるにも関わらず,その仕組みは十分に解明されていない。
我々の研究室では,成長速度が速い小型魚類の胚を酸素分圧が変化する条件(低酸素や酸素の再供給)で飼育することで簡便・迅速に発育初期の成長遅滞や追いつき成長を誘導する実験系を確立している。この系を用いて,私達は主に発生学・分子生物学・内分泌学・生理学的なアプローチから追いつき成長やその後の体質変化を説明する分子機構を探っている。その為に,特に以下の研究課題を設定しその解明を目指している。