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数物科学系

助教石渡 弘治

  • 研究者情報
  • 素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理(理論)

Keywords

素粒子論,宇宙論

Research content

 ひとつおぼえるだけで全ての答えがわかる – そんな魔法のようなことあるわけないと思う人が多いと思います。しかし私が専門とする素粒子物理学が目指すのは、最も基本的な原理からすべての自然法則が導かれる、そんな自然原理を見つけ出すことです。

 現代素粒子物理学には「素粒子標準模型」と呼ばれる理論模型があります。素粒子標準模型は、自然界に存在する4つの基本的な力のうち、強い力、弱い力、電磁気力の3つを統一的に扱うことに成功しており、これまでに観測されている実験事実とほぼ無矛盾で、かつ、予言された素粒子はすべて発見されています。しかし残る最後の力、重力の統一には至っておらず、それ以前に他にもいくつかの問題点が指摘されています。その一つが暗黒物質の存在です。

 暗黒物質の存在は20世紀初めから示唆されていましたが、エドウィン・ハッブルによって宇宙膨張が発見され、さらにビッグバン宇宙を裏付ける宇宙マイクロ背景放射が見つかって以降現在に至る宇宙観測実験により、その存在はほぼ確定的となっています。重力を統一する理論を構築するためにも、まずこの観測事実を説明する理論を作るのが先決だと考え、私は素粒子標準模型を拡張し、暗黒物質を含む初期宇宙のシミュレーションの研究を行っています。さらに現在世界各地で、暗黒物質を直接的あるいは間接的に検出する実験が進められています。そのような検出実験でどのようなシグナルが観測されるかを、理論的に高い精度で予言する研究も進めています。

 他にはバリオン生成機構の謎があります。現在宇宙に存在するバリオン(陽子や中性子)は、もちろん私たちが観測可能な物質ですが、実は素粒子標準模型ではこのバリオンが宇宙初期にどのように作られたのか説明できません。この問題に対して私は、重力が統一される程高いエネルギースケールの物理との関わりに興味を持っています。重力を統一する究極の理論の有力候補に超弦理論があります。私は超弦理論から予言される物理現象がバリオン生成機構に与える影響などについても興味を持って研究しています。

 素粒子物理学は日常とかけ離れた学問だとか難解な学問だとしばしば言われます。実際、現在では素粒子実験規模は大規模化し、また宇宙観測では全く手の届かないスケールの現象を観測しています。つまり目の前で現象が起こって観測できるわけではありません。さらに高度な数学を用いて現象を記述するため、イメージしにくい面があるのは確かです。しかし出発点は単純な疑問です。力とは何か?粒子とは何か?宇宙はどのように始まり、将来どうなるのか?云々。私が最も大切にしていることは、ふしぎだと思うことです。私自身、なぜ?と思うことに導かれながら素粒子物理学へ進みました。大学院で研究を始めてからもう10年になりますが、論文を読んでいて難解だと感じることはしばしばです。そんな時、自分がどこにひっかかっているのか、自分が気になる部分はどこなのか、という視点を忘れずに研究していきたいと思います。

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