私たちの研究室では、人工衛星を利用した先進的な科学観測を展開することを目標としています。特に、宇宙最大の爆発現象である「ガンマ線バースト」を観測対象としており、これまでに、突発的ガンマ線はエネルギーが高いほど明るいという普遍的な性質(米徳関係式)の発見や、世界初となるガンマ線偏光観測の実現などの成果を挙げてきました。現在は、2つの中性子星が合体してブラックホールを形成するときに、強力な「重力波」と「短時間のガンマ線バースト」が同時に発生することに注目しています。
本研究では、金沢大学が独自に開発する超小型衛星1号機のプラットホームを利用し、重力波の発生と同期したX線・ガンマ線突発天体を発見することを目指しています。これにより、ブラックホールが誕生する瞬間の物理過程を観測的に解明できるようになりますし、ブラックホール時空の周辺環境を理解できるようになります。以下のような年次計画で研究を進めていきます。
2016年度:広視野X線撮像検出器のフライトモデルの開発
2017年度:X線検出器の性能評価および環境試験、超小型衛星のフライトモデルの開発
2018年度:X線検出器を搭載した衛星の総合試験、および、年度末の打ち上げを目標
2019〜2020年度:人工衛星の運用と科学成果の創出
重力波と電磁波の観測が連携することで、全く新しい宇宙物理学・天文学の時代が到来すると期待されています。私たちの研究室は、この「重力波天文学」の創成に大きく貢献したいと考えています。